映画評(ナショナルジオグラフィック)

「ツンドラブック──小さな岩、ブクブカイの物語」は、ロシア領北極圏の最果てにある半島で近代生活とはほぼ隔絶されて生きるチュクチの民の暮らしに関する、貴重で驚くべきドキュメンタリーだ。物語は一人の男、ブクブカイと彼のコミュニティを軸にしている。ブクブカイ(「小さな岩」の意)はロシア東部出身のチュクチで、ベーリング海沿いの地域に住んでいる。トナカイを放牧する遊牧民として生涯を過ごしてきた彼は、人生をトナカイから切り離すことのできない真のツンドラの男として仲間内で知られている。チュクチは1万4,000頭以上のトナカイを放牧している。ブクブカイが住むのは、世界でも有数の過酷な気候帯である北極圏だ。ブクブカイとチュクチの民の話は、生存のための絶え間ない闘いの物語だが、先住民たちは遊牧民たる祖先の文化的伝統に従うことが、凍てついたツンドラを生き抜く自分たちに耐える力をもたらすと信じている。この映画は、あまりにも地の果てであるがために、かつて捉えようとした者がほとんどいない土地、文化、人々を垣間見させてくれる。今しばらく遊牧民チュクチの文化は、近代化の波の及ばないところで、ほぼ手つかずのまま生きている。

監督紹介:アレクセイ・バクルシェフ
1969年、ロシア・チュクチ自治区の首都アナディリに生まれる。ウラジオストク演劇研究所で演技芸術の学位を取得した後、1991年にモスクワの全ロシア映画大学(VGIK)で映像製作を学び始める。93〜96年にかけて製作した「Time When Dreams Melt」は、監督自身の出自である北東アジアの先住民ユピックを追った初のドキュメンタリー作品。ユピックの内側からの眼差しによって、チュクチ半島のエスキモーたちの生活、問題、希望に初めてまったく新しい視点が与えられた。
1996年の「Birds of Naukan」また、アジア・エスキモーの運命を描いた映画で、翌97年にミュンヘン国際映画学校祭(独)で監督賞を、シカゴ国際映画祭(米)のドキュメンタリー・ヒストリー/バイオグラフィー部門でシルバー・プラーク賞を受賞した。
バクルシェフ監督は映像製作の中でも複数の分野を経験し、脚本執筆やコマーシャル制作の他、Avidエディターを務めたり、テレビ映画の監督として民族誌学的遠征に参加したりしたこともある。現在も製作の実現を待つ数十の脚本、プロジェクト、構想が引き出しにしまわれている。それらは極北東ロシアの先住民たちの歴史や文化、霊的生活や社会生活に関連したプロジェクトである。

オリジナルページ http://events.nationalgeographic.com/films/2012/03/16/tundra-book/