日本上映への推薦のメッセージ

池谷和信 国立民族学博物館教授   氷点下30度を超えるツンドラの大地で、トナカイを飼う遊牧民チュクチがいる。日本人と容貌がよく似た人びとだ。住居も衣装もトナカイの皮でおおわれ、肉は食糧として欠かせない。トナカイがいなければ生きていけない人びとである。映画では、雪原の大地に風の音が響き、あたかもその場所にいるかのような錯覚におちいってしまう。子供たちが学校に行くためにトナカイ飼育を離れる場面での主人公ヴクヴカイの叫びが忘れられない。それは、チュクチの魂の声だ。人が自然の一部であることを改めて教えてくれる。


川村シンリツ・エオリパック・アイヌ  川村カ子トアイヌ記念館館長   同じ北の先住民として自然のなかに生きるものは、すべてに精霊が宿っていることを知っている。犠牲となる動物の命もまた尊い。文化や言葉を守ることは、先住民として生きることを意味する。ヴクヴカイの生き方や憤りに大いに共感し、またツンドラの雄大な景色に魅了された。


原一男    大阪芸術大学客員教授・映画監督 零下30度を超える厳寒の地…東京に長く暮らす私には、そのような寒さを想像すらできない。そんなツンドラにトナカイ人たちは生きている。子供たちはトナカイの皮の衣服で全身を包み、雪の坂を滑る遊びに熱中し、夏には植物の木の実を味わい、川で魚釣りに興じる。まさに大自然によって生かされていると実感する。がロシア政府の同化政策による文化や伝統、言葉の収奪からは逃れられない。映画は、そんな先住民たちの悲劇を静かに見つめた秀作だが、見る者の心に必ずや、彼らの悲痛な叫びが突き刺さってくるだろう。

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